バカバカしい訴訟でも「応訴」しないとどうなるか

バカバカしい訴訟でも「応訴」しないとどうなるか
わが身と家族を守る鉄則

「私の事務所にも『訴えたい』と駆け込んでくる人は多いのですが『必ずしも訴訟を起こす必要はないのでは』と思えるケースも多く、そういうときは思いとどまってもらいます」

梅原ゆかり弁護士がこう話す。各地の法律事務所で同じような光景が見られるという。いまの日本では、騒音、水漏れなどささいなトラブルでも「訴えてやる!」と息巻く人が確実に増えているのだ。

もし、そんな人に訴えられたらどうなるのか。

いくら「自分には何も非はない」と思っていても、訴えられたら必ず「応訴」しなくてはならない。訴えられた人が裁判所からの呼び出しを無視していると、基本的に原告、つまり訴えた側の主張がすべて認められてしまうからだ。

といっても、一般常識から考えて多すぎる額の損害賠償の請求などは、裁判所によって減額されることになるが、常識の範囲内で最も不利な扱いを受けてしまうだろう。

仮に賠償額が低くても、関係者が支払う代償はそれだけではない。弁護士に書面作成や法廷での弁護を頼まなければならないし、何度も裁判所に呼び出されるという手間もバカにならない。

訴訟が増えたのは「近隣間のコミュニケーションの欠如が一因」というのが梅原弁護士の見方である。

PRESIDENT 2011年12月19日号

「ささいないざこざが訴訟に発展しないようにするためには、普段からご近所同士でコミュニケーションを取っておくことが一番です。たとえば回覧板を渡すときやゴミ出しをするとき、お互いに『おはようございます』と挨拶していれば、相手のやったことで気になることがあっても、そうした機会に一言注意すれば済むはずですから」
眞壁・梅原法律事務所 弁護士 梅原ゆかり
栃木県生まれ。宇都宮女子高校、早稲田大学法学部卒業。1999年、同大学院修了。牛島総合法律事務所などを経て現職。『近隣トラブルの法律と実践的解決法』など著書・監修書多数。

2015年12月23日